島袋教授の終の住処 について

このプロジェクトは、沖縄県内で長く英語教師として教鞭をとってこられた
島袋教授の終の住処として設計した。

敷地は、島袋教授の故郷である沖縄県北部、宜野座村にある。

長く地元を離れて那覇の市街地で暮らされてきたが、85歳となった今、
故郷であり、新任教師としてスタートを切った地でもある宜野座村へ戻り、
ゆっくりと暮らしたいと考えたことが、このプロジェクトの始まりであった。

当初の案では、一人暮らしという事もあり
ミニマムなワンルーム案を検討していたが
教え子たちとの関係が今も続いており、来客が多いことをお聞きし
パブリックとプライベートのスペースをしっかりと分ける計画となった。

120坪の広い敷地に対して、住宅は17坪ほどの規模となったため、必然的に敷地には多くの余白が生まれてくる事となる。

建物をどう配置するのか、敷地に生まれる余白の使い方が、このプロジェクトの重要なポイントになると感じていた。

当初、せっかくならば大きな庭を作ろうと、
敷地隅に建物を配置し、庭スペースを大きくとるような検討を行なっていたが
次第に、高齢の一人暮らしの生活の中で、果たして大きな庭が必要だろうか。という違和感が生まれてきた。

そこで、建物を敷地の中央付近に配置し、
敷地内に「ふたつの庭」として、分散させてみることにした。
これにより、庭を適切な大きさへと調整し、
敷地内で起こるシーンを増やすことができると考えた。

ふたつの庭は目的が異なり
ひとつは、住宅のパブリックスペースから繋がる庭。
もうひとつは、建物にアクセスするアプローチのための庭とした。

島袋教授にはじめてお会いした際、
「とてもよく歩く人だな」というのが第一印象であった。
若い頃からジョギングで鍛えられた足腰が健在で、その歩く姿が強く印象に残っていた。

島袋教授の歩き姿を想像しながら、庭の中を通っていく、アプローチの間をしっかり取ること、ゆったりとしたスロープを設けることで、外部環境から室内に入る前の意識の切り替え、そして段差解消として、庭が上手く機能してくれると考えた。

住宅の設計では、敷地条件、そこに住む人によって、計画は大きく変わってくる。

誰でも使いやすいようにつくる、ユニバーサルなデザインの仕方もあれば、そのオーナーに合わせてつくる、オーダーメイドなデザインの仕方がある。
今回の島袋教授の計画は、後者のタイプに近い。

この敷地でできること、そのオーナーについてよく考えて
何度も検討を繰り返しながら
島袋教授のための住宅を目指した。

相変わらず、派手さはないが
いつも通り、焦らずに、ただ与えられた目の前の仕事と向き合う。