那覇市民会館との対話


沖縄の建築家・金城信吉が設計した「那覇市民会館」 (1970年)は

2024年11月、解体工事が始まる。

「沖縄の建築とは何か!」
沖縄の民家建築の雨端空間を現代建築に再考し「光と影の建築」を表現した作品。
この作品は沖縄の現代建築の流れをかえていった。
『沖縄原空間との対話』より抜粋

那覇市民会館は、沖縄本土復帰宣言が行われた歴史的な場所であり、県民の集いの場として長く親しまれてきた。
また、戦後沖縄の近代建築に新しい流れを生み出した象徴的な建物として、後世の沖縄の建築家たちに影響を与えてきた。

解体を前に一度は内部を見ておきたかったが、老朽化のためそれは叶わず、最後にせめてその外観を心に刻み、写真に残そうと与儀公園へ向かった。

建物の前に立つと、激動の時代を乗り越えてきた建物のオーラに圧倒され、息を呑み、緊張しながら最初のシャッターを切った。

大きな影を落とす雨端の空間、周囲を囲む琉球石灰岩を積み上げたヒンプン、外壁や屋根に刻まれた陰影が、沖縄の風土を表し、「沖縄の建築とは何か!」という力強い問いかけが、形を持って目の前に迫ってきた。

シャッターを切るたびに、まるで対話しているような感覚に陥り、閉館してもなお存在感を増し聳え立つ建物を通して「君もまだまだだな」と語りかけられた気がした。

戦後沖縄の誇る偉大な建築物が失われるという喪失感とともに、ひとつの時代の終わりを改めて意識した。

金城信吉が生きた時代の沖縄とは、劇的に変わりつつある。

彼が「しまーみーらんなとーしが」(島が見えなくなっている)と当時の沖縄の現状や未来を案じ、葛藤していたように、現代を生きる私たちも、かろうじて残っていた沖縄の風景が、過剰な資本主義によって急激に消費されてゆく様を目の当たりにして、日々葛藤している。

物事の本質はどこにあるのかを、私たちの目でしっかりと見極めることが、今まさに求められているのかもしれない。

「沖縄の建築とは何か!」という問いかけを受継ぎ、まだ未熟ながらも自分もその問いと向き合い、踠き、表現していきたい。

那覇市民会館との最後の対話を通して、静かにそう誓った。