フェスティバルの面影を探して

1984年、那覇の国際通りに建築家 安藤忠雄 設計の「フェスティバル」という商業施設が存在した。
自分がまだ生まれる前のことだが、この建物は後に沖縄OPAとなり現在ではドン・キホーテ国際通り店へと姿を変えている。

フェスティバルは安藤忠雄氏の初期の作品で、”光と風と影が孕む箱”というコンセプトで安藤建築の中でも地域性を強く意識した作品だったが、他作品に比べて写真や資料が少ない作品でもある。

2019年、縁あってこの建物がある那覇市松尾に住むこととなり、目にする機会が増えて当時のことを調べるようになった。フェスティバル時代の写真を見ているうちに、オリジナルの空間をいつか体験してみたいとも思ったが、現状はなかなか難しい。ならば写真の中でなら面影を探すことができるんじゃないかと思い撮影を試みることにした。

1度目の撮影では、膨大な商品や広告などの色彩の多さ、店内に響く爆音などに圧倒され、現状空間への落胆の気持ちもあって一枚も撮れずに逃げ帰る結果となった。

その後、めげずに気持ちを落ち着かせてまた撮影へと向かう。雑多な色や音を自分の中で排除して集中して視る。カメラの設定をモノクロにする。

古い本の中で見たフェスティバルの面影がほんの少しだけ浮かび上がってきた。